語り継がれる伝統芸能

『能勢の浄瑠璃』200年の歴史


 古くから親しまれてきた<能勢の浄瑠璃>は、太棹三味線と太夫の語りによって物語が進行する素浄瑠璃と呼ばれる座敷芸ですが、江戸時代後期、文化年間(1804~1817年)から今日まで200年以上にわたる能勢の大切な芸能です。竹本文太夫派・竹本井筒太夫派・竹本中美太夫派があり、互いに励まし競いあってその伝統を継承してきましたが、2001年(平成13)に新しく竹本東寿太夫派が誕生し、四派となりました。

 

 <能勢の浄瑠璃>の特質は、他に類例をみない”おやじ”とよばれる制度にあり、いわゆる家元にあたりますが、違うのは世襲制ではないということです。”おやじ”になる太夫は弟子を5、6人養成し、後継者の育成を行います。新しい”おやじ”が誕生することで、それまで浄瑠璃とは縁のなかったおやじの周りの町民を浄瑠璃の世界へと誘い込む、つまり浄瑠璃人口の拡大に繋がっています。

 こうして現在でも、約200名の語り手が存在し、町内各地区に太夫襲名の碑など100余基が残されています。ここ能勢町がいかに浄瑠璃に馴染み、親しんできた土地であったかを物語っています。農業の傍ら、土地固有の芸事として、農閑期に師匠からマンツーマンで稽古を受け、身につけていったものであるということ。つまり、庶民によって創られ、伝え続けてきた文化だということです。

 

 1993年(平成5)に大阪府無形民俗文化財に指定。

 1999年(平成11)には、”浄瑠璃という芸能が地域に伝播し継承される過程で、全国的にも希少な伝承のあり方を生み出したものであり、芸能の過程を知る上で重要”とのことから国の無形民俗文化財の選択を受けています。